すぎた きゅうしん
杉田久信の “現場”
からの教育提言
 ≪基礎学力で教育再生≫

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A.理論編 B.実践編 C.心の教育 ◆校長室の窓から ◆リンク集
1 教育を歪めた戦後の論調を糺す
2 指導要領改訂が学力低下をもたらした
3 アメリカ教育の荒廃と再生の過程
4 教育行政への提言
5 基礎学力をつける5つの柱
6 基「子供を楽にする教育」か「子供を鍛える教育」か
7 基礎学力の徹底で教育は再生する
8 戦後教育が善意で犯した罪
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A【理論編】今、なぜ基礎学力か

4.教育行政への提言  今日、必要な教育改革の方向

教育行政は以下の方針を明確に打ち出すことが必要だと考えます。


  @ すべての子供たちに基礎学力を身につけさせる

 A すべての子供たちに規範意識を身につけさせる

 B すべての子供たちに夢・志をもたせる

 

1 「基礎学力」重視の方針を行政が明確に打ち出す

 これまでの学力低下策を改め、上記の「基礎学力」と「学習規律」重視の明確な方針を打ち
出すことこそ、今日、最も必要とされています。教育の制度(30人学級、学校選択制、教員評価、二学期制などの制度)の改革も必要ですが、それ以上に、まず「基礎学力重視」の教育の基本的方向を明確に示すことは何より重要です。これこそ教育問題を抜本的に解決し教育の再生につながる教育改革の本丸です。「学びのすすめ」が文部科学大臣から出されただけでも、全国の学校現場は大きく変わり、子供たちの学力低下や問題行動に歯止めがかかりました。日本の学校現場の潜在的教育力は、まだまだ健在です。「基礎学力重視」の方針を明示するだけでも日本の教育再生は十分可能です。学校が基礎学力に力を入れれば、子供たちの問題行動は少なくとも半減するものです。

 アメリカでは大統領が、イギリスでは首相が「学校の規律の強化」と「基礎学力の重視」の
教育改革を自ら呼びかけて教育を再生させたように、日本においても総理大臣自ら呼びかけ
ることが望まれます。もし、総理大臣自らこの方針を明示されたなら、子供たちの学力が向上
するだけでなく問題行動も半減し、必ず日本の教育は英米以上に劇的に再生すると確信しま
す。 

 国レベルでできないのなら、県、市レベルで県知事や市長がこの方針を明示するか、あるい
は議会で採決するだけでも大きな成果が期待できるに違いありません。  

2 カウンセリング一辺倒の生徒指導の方針を改め、
                  
「規律」を重視する中での温かい指導を目指す 

 今日の日本の生徒指導はカウンセリング的手法一辺倒です。生徒指導に「規律重視」を盛り込めば管理主義、規則主義だと批判されそうな風潮が続いています。このような風潮が社会全体にも影響を与え、社会の規律やモラルの著しい低下をもたらしてきたと考えられます。(注:平成18年度に入って規律重視の傾向が芽生えてきています)

ところで、カウンセリング的指導法は不登校児童・生徒には効果がありますが、現場の深刻な生徒指導の実態には全く適応できません。事実、一部の反抗的暴力的児童生徒の存在により、その学校の規律が乱れ、授業が成立しにくい状況につながり、大多数の善良な児童生徒の学習権が奪われているような事例には、カウンセリング的指導法はほとんど無力です。反抗的暴力的児童生徒には規律重視の毅然とした対応も必要です。規則違反など問題行動に対しては、自ら責任をとることをしっかりと教えなければなりません。善良な子供たちを守るためには、反抗的暴力的児童生徒の出席停止を積極的に活用することも大切です。教育行政は学校の実態に応じた規律重視の生徒指導も積極的に認めるべきです。特に高校では、学力優秀な生徒を集めている学校とそうでない学校で生徒指導の方法は当然違ってきます。例えば、細かい規則を作って厳格な生徒指導を行っている学校があっても、その生徒指導法が成果を上げていれば、一部のマスコミから管理主義とのレッテルを貼られてバッシングされても、教育行政は援助・支持する立場に立つべきだと思います。

 今、日本の生徒指導に必要なのは、カウンセリング的指導に偏るのでなく、規律重視の指導とのバランスをとることです。つまり、「規律ある中での温かい指導」を目指すのです。具体的には、教育行政が生徒指導綱領を作ることも必要です。児童生徒の行動の指針を、文部科学省や教育行政サイドが責任を持って明示するのです。そうすれば、各学校も責任ある校則を作って生徒指導を行うことになり、現場の教師の士気が高揚し多様な工夫が生まれてくるでしょう。

 

3 道徳的徳目教育を行う

 戦後の道徳教育では、文部省と日教組の双方から「子供自ら気付くことが大切であり、価値の押しつけは絶対してはならない」とされてきました。それで、多くの学校で行われている道徳教育は、資料やテレビを見て思いつきの意見を話し合ったり、登場人物の気持ちを話し合ったりする力のないものになってきました。そこでは価値の押しつけが禁止されているため、「悪いことは悪い」と教えることや「人間としてやってはいけないこと、守らなければならないことなどの生き方の基本」をきちんと身につけさせることができないのが現実です。戦後の道徳教育は子供たちの問題行動や心の荒廃には無力だったのです。戦後半世紀以上も日本の教育では社会規範を教えてきませんでした。守るべき社会規範とは何かをはっきりさせる努力すらしてこなかったのです。戦前の「修身」の反動から日本社会は社会規範について思考停止に陥ってきたのです。それでも今日まで社会がもってきたのは、人に迷惑をかけてはいけないといった当たり前の「暗黙の社会規範」が残っていたからです。しかし、旧世代の人々が姿を消したことで、今やそれも怪しくなっています。

  日本の道徳教育で今日必要なのは、道徳的徳目をインドクトリーネーション的【注入的】に教えることです。これまでの道徳教育が無力だったのは教え込むことを避けてきたからです。伝統的な徳目に加えて、世界中の修養本に詰まっている「生き方の知恵」、ライフスキル、コミュニケーションスキルなどをも繰り返ししっかり教えることが大切です。それも、心に響くように教え込むのです。「人間としてやってはいけないこと、守らなければならないことなどの生き方の基本」も子供の心に届くように反復して教えられなければなりません。この守るべき社会規範は「当たり前のこと」という誰もが賛同できる観点から提示すれば、修身の反動から思考停止してきた状況を打破できると確信します。(参考:当たり前のこと10か条の実践)

 

4 教員の学級担任の比率を増やす 

 日本と学力世界一のフィンランドを比較すると、教員比率【児童生徒総数÷教員総数】はほ
ぼ同じなのに、日本は40人学級でフィンランドは25人学級だといわれています。これは、日本の教育は管理を重視していて、管理職や指導主事など、学級を担任してない教員や授業をしてない教員が 多すぎる(一説によれば教員の4分の1が授業をしていない)からです。最近では、子供の問題行動の増加に伴い、対症療法的にスクールカウンセラー、心の相談員、司書教諭、栄養教諭、特別支援教諭などを増やす方向にあり、40人学級を維持したまま教職員は増える一方です。これは、教育の現状が深刻なために取られた措置であり、いわば、学校教育の失敗に伴う焼け太り状況といえます。しかも、これらの措置は十分な効果を上げておらず、教育問題の抜本的な解決にはつながっていません。国の財政状況を考えると、今後は小さな政府・小さな行政の方向に行くしか選択肢はありえず、学校教育の焼け太りは許されません。

 教育問題を抜本的に解決するためには、上に記した「基礎学力の重視」とともに、「30人学
級 」の実現が必要と考えます。国や地方の切迫した財政状況の中で、保護者の要望が強い30人学級を実現するには、教員の学級担任の比率をフィンランド並に高めることで可能になります。これは、教員を増やさなくても行政が決断すればできることです。そのためには、教育行政をスリム化し学校現場に権限と責任を一層持たせることが必要になります。

 30人学級と「基礎学力」「学校の規律」重視のセットで、子供たちの学力向上と生徒指導に効果を上げて学校教育の焼け太りを防ぐことができると確信します。

 授業時数を増やす 【略】

 @ 先進主要国並の授業時数を確保し、特に「基礎学力」と「体育」の授業時数を大幅に増
    やす。

 A 授業時数を確保するため、週五日制を続けるならば祝祭日の振り替え休日を極力廃止
    し、夏休みを短縮する。 

6 「教師としての使命感」と「教育技術」を高める教員研修を増やす 

  患者が医者に求めるものは病気やけがを治す専門技術です。同じように教員に最も必要なのは優れた教育技術です。教員が高度な「教育技術」と「使命感」を身に付けていれば、教員への信頼は自ずと高まります。教員研修の中心は「教育技術」と「使命感」を高める研修にすべきです。

  なお、戦前の師範学校には「教師としての強い使命感」が存在するとともに、伝統的な読み書き計算を中心にした世界最高水準の「教育技術」が蓄積されていました。その中には、今日も十分活用できるものが少なくありません。しかし、師範学校の廃止とともに、これらの「使命感」と「教育技術」の伝承は断ち切られてしまいました。「教育は技術ではない。教育理念こそが大切だ」として教育技術は目の敵にされて、戦後の大学の教育学部には全く受け継がれませんでした。そのため、大学では教育理論は教えても教育技術は教えられませんでした。現場で役立つ教育技術を教えられずに大学を出た新規採用教員のほぼ全員が、必ず学級崩壊的状況を経験しています。この状況は今も変わっていません。今も教育技術は学校現場で身につけているのが現状です。最近の扱いの難しい子供の増加や授業の成立が困難な事例の広がりを考えると、今日必要なのは、まず、教育現場から優れた「教育技術」を集め、その優れた「教育技術」を広げるための教員研修を増やすことです。