B−基礎学力はこうしてつける
11.国語授業のパターン化・国語ノート指導法
国語授業の型
「音読を重視し、読み取る力を付ける国語指導」 1 国語指導の基本の型
☆ 国語では、授業の中で音読・暗唱・視写・漢字などの反復学習をしっかり行うことで、どの子にも言葉や文字への感覚が育ち、国語力の基礎が身に付きます。とりわけ、優れた教材文は、暗唱するほど音読を繰り返すことによって、心の底に深く根ざした真に生きた言葉として育っていきます。これが、音読を重視する理由です。また、簡単な問題をテンポよく続けて出す「読解トレーニング」の指導は、問いと答えの基本を身に付け、読み取る力を付ける上で極めて効果的です。
ここで提案する国語授業の型は、「音読の徹底」と「読解トレーニング」で国語力の基礎を鍛え、その上で、「中心問題」で子供たちが意見を述べ合い、豊かな交流を通して読みを深め、考えを練り上げることを目指します。その際、発問・板書・ノート指導を重視します。
※ 学習準備の確認(学習用具、ノートの日付、姿勢、心構え、表情等)
「準備が早い」「姿勢がよい」「言われなくてもできている」などとほめながら準備を促す。
@ 心地よい音読の徹底
「音読の指導法」 参照 本時で扱う場面を音読し、意識化を図る。「本を持って、はっきり した発音で読んでいる」「声がそろって美しい」とほめながら、心地よく美しい音読を目指す。
A 漢字の練習
「漢字の指導法」 参照 1字につき指書きを20回以上行って記憶の定着を図る。ていね いさを重視し、「美しい字だ」「ていねいに書いている」とほめる。
B 読解トレーニング ※この指導法の詳細は後述
簡単な質問をテンポよく続けて出し、問いと答えの基本を身に付けさせる。「準備が早い」 「 手のあげ方がよい」 「本をよく読んで確かめている」「真剣に考えている」とほめ、集中 させ学習の構えをつくる。
C 「中心問題」での協同学習(物語文、説明文それぞれの型で行う)
※この指導法の詳細は後述
全体の場で各自の考えを交流し、様々な考えを知ることによって、考えを見直し・深め・
練り上げる。
〔物語文〕
・中心問題は教師が必ず板書して提示する。
・各自の考えをノートに必ず書く。・2人〜4人グループで意見をすり合わせる。
・全体の場で子供の発言を教師が板書しながら、多様な考えを交流・吟味する。
〔説明文〕
・本時の段落の要約を指示する。・各自の要約をノートに書き、教師に見せる。
・子供が板書し、全体で話し合う。
☆ 「要約文のつくりかたを約束する」
・再び要約文をつくり、全体で検討する。
「人の意見を聞いて考えが変わることは、考えが深まることであり、いいことだ」と歓迎する
D 今日の学び
・学んだことを隣と話し合ってノートに書く
早く書けた子(多くは内容も豊か)に音読させる。それが、書けない子のヒントになる。
※ それぞれの活動の「確認」場面でほめる。よさを全体に広めたい場面でほめる。
2 読解トレーニング
「読解トレーニング」とは、問いと答えの基本を学ぶこと、基本的な読解力をつけること、 学習の構えをつくることを目標に、文章に沿って簡単な問題をテンポよく出していく指導のこ とです。
音読や漢字の反復練習で、教材文のあらすじをとらえている上に、簡単な問題を文章に 沿って出していくので、読み取りがより深まり、どの子も問いに対する答え方の基本を身に 付けることができます。しかも、問題を口頭で出すので、子供たちに聞き取る力も付きます。
さらに、テンポよく学習が進められるため、緊張感のある全員参加の学習の場となります。 どの子も指導に引き込まれ、結果的に学習の構えをつくることにつながります。
@ ノートに番号を付けさせる ※ 国語のノート参照
・ 間をあけながら、出題数(通常10題程度)分の番号を書く。
A 教材文の流れに沿って、簡単な問題をテンポよく出す
・ 文の中から答えが探せる問題を十分吟味して出題する。問題は板書せずに口頭で出 す。
・ 正解が一つになる問題を出す。→ 「漢字1字で答えなさい」「6字で答えなさい」など
B ノートに答えを書かせる ※ 国語のノート参照
・ ノートに答えだけを書かせ、書けた者から挙手する。
C 指名し、発表させる
D 解答し、簡潔な説明をする
・ 1問ごとに答え合わせをし、その場で答え方の指導をする。
問い:「どうして…なのでしょう」 → 答え方:「…から」
問い:「どんなもの」 → 答え方:「…などのもの」
・ 間違えていたら、その答えの上に×をつけ、その隣に正解を書かせる。(消しゴムは使 わない)
・ 読解トレーニングでは話し合いはしない。 <読解トレーニングのノート(例)> 
3 「中心問題」での協同学習
(1)物語文を中心にした協同学習
@ 「中心問題」は教師が必ず板書して提示する
・ 「中心問題」は、みんなで考えを練り上げる協同学習に耐えられる問題を提示する。
(例) ×「スーホは誰の夢をみましたか」 → これは読解トレーニングで扱う。集団で思考を する必要がないから。
○「白馬は、殿様のところにいるのと、スーホのところに戻ったのでは、どちらがよかっ たのでしょう」 → これは、中心発問として十分に値する。子供の価値観に
より多様な意見が出やすいからである。子供は自分の意見をもち 、豊かな交流と教師の導きによってある結論へと高まっていく。
・ 教師は協同学習を確実なものにするために「中心問題」を板書する。これは、発問を固定 するため。
A 各自の考えをノートに必ず書く
・ 自分の考えを書く。(自分の立場をはっきりさせる)
・ 根拠を明確にする。
文中から根拠となる叙述を書き抜く。それを、どう捉えたかを書く。
B 2人〜4人グループで意見をすり合わせる
・ 2人または4人なら、どの子も考えを発表できる。また、各自の考えを交流し、すり合わせ ることで、全体の場でも自信をもって発言できる。
C 全体の場で子供の発言を教師が板書しながら、多様な考えを交流・吟味する
・ 教師は子供の発言を板書する。黒板は子供たちの考えの集中点となる。
・ 子供の発言が行きづまったり、深まらないときは、補助発問をする。
・ 意見交流の間は、子供たちはノートをとらない。板書を見ながらみんなで考えを練り上げ ていく。
◎ この学習を通して、子供たちは自分と違う意見、自分が考えも及ばなかった発想にふれ 、 多くを学んでいく。
<物語文のノート(例)>

(2)説明文を中心にした協同学習
各形式段落を、自力で25字以内に要約する。
説明文指導では、段落を要約することを通して、段落と段落との関係、文章全体と段落と の関係など文章の構造をとらえ、筆者の主張に迫ることができます。
@ 各自、要約文をノートに書き教師に見せる
・ 25字以内で要約させる。(25字以内なら3年生からでも意味の分かる要約が可能)
A 子供が板書し、全体で話し合う
・ 多様な要約文が出てくように考慮して、10名ほど指名して板書させる。
・ ネームプレートを貼ってから、板書させる。
「要約文のつくりかたを約束する」
★ 主語キーワード、述語キーワード、修飾語キーワードを確定する。
○ 一番大切な主語が、「主語キーワード」
【決め方】 その段落の中で、一番大切な文章を選び、一番大切な主語を選ぶ。
または、段落の文章中からすべての主語を取り出し、一番大切な主
語を選ぶ。
○ 選んだ「主語キーワード」の述語が、「述語キーワード」
○ 「主語キーワード」の修飾語、または、「述語キーワード」修飾語が「修飾語キーワード」
★ 要約文は、主語キーワードを文末置き体言止めにする。(この方が主語が明確に意識さ れ、文としても簡潔になる)
★ 日本語としておかしい表現、誤字、脱字は直す。
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・ この約束を踏まえ、板書された10名の要約文のキーワードを全員で検討し、キーワード
を確定する。
B 再び要約文を作り教師に見せる。子供が板書する
・ 確定された3つのキーワードを入れて、文末に「主語キーワード」を置いて体言止めして、 25字以内でもう一度要約文を書き直す。
・ 早い子5人ほどに板書させる。要約文には文字数も書かせる。
C 要約の約束が守られているか、板書の要約文について全体で確かめる
・ 板書の要約文を全体で検討したら、自分の要約文も確かめる。
・ 要約文を確定して書く
<説明文のノート(例/見開き1ページの学習ノート)> 
4 「ひとり読み学習」
子供たちの学習規律と学習能力が高まってきたら、より高度な「ひとり読み学習」に挑戦することも必要です。この指導法は、以前、同僚だった福沢小・福田節子校長が開発されたものです。
(私が勝手に変更した部分あり)
(1) 学習する場面の音読をする
(2) 場面ごとに「ひとり読み」をノートに書く
※ ていねいに、なるべく詳しく、たくさん書くことを子供と約束する。
@自分の心が動いた叙述や言葉を抜き出して視写し、赤鉛筆で囲む。→どこを
抜き出して視写すること自体が大切な勉強。赤で囲むのはきれいなノートづくりのため。赤 で囲む時はミニ定規を使わせる。
A抜き出して赤で囲んだ文章の隣に、気づいたことや考えたことを書く。→どう読み
抜き出した文章に関して、思ったまま書き連ねたり箇条書きにしたりする。
B この活動を進めているうちに、全体を通して思ったこと、気づいたことや強く心に広がって くること、分かったこと、疑問に思ったこと、皆に知らせたいことなどをカードに書いて、ひとり 読みノートに貼りつける。→どうとらえたか
カードは、横4p、縦10pほどの画用紙を切ったものを用意する。
(3) 机間巡視して、扱うべきいくつかの意見を見つけ、その子に板書させる
@ 机間巡視しながら子供たちの代表的な意見を見つけ、子供に板書させる。
A 全ての子どもが読めている場面については、学力の低い子に板書させる。はやい子には 他にも意見がないか考えさせる。板書も読んでおくよう促す。
B 板書では、チョークの色を約束しておくと意味がよくわかる。
どこを・・・・・・・・・白チョーク
どう読み・・・・・・・黄チョーク
どうとらえたか・・赤チョーク
C 机間巡視しながら、「どの文や言葉に立ち止まらせ、考えを深める場面にするか」、「それ はどの子供のどの読みをきっかけにするか」を決める。 (4) 「ひとり読み」をもとに話し合う
低学年やひとり読み学習に慣れていない学級では、段落や場面ごとに、ひとり読みを書いては話し合うようにする。(高学年や慣れた学級では、いきなり全文のひとり読みを3〜4時間使って書かせ、その後の話し合いで読みを深めていくこともできる。その際、話し合いの前に全員の子供の「ひとり読みノート」に目を通しておく)
@ ノートを棒読みすると、話し合いに勢いがなくなるので、ノートは閉じさせる。
A ノートに書かなかったことでも、話し合っているうちに思いついたことも言えるのが素晴ら しいのだと、子供たちに話しておく。
B 話し合いの取りかかりは、どの子供も読めている場面から取り組む。そこでは、学力の低 い子供にも発言させる。「そんなことなら僕にも話せる」という思いが授業を盛り上げます。そ こから話し合いのテーマや課題を少しずつ焦点化していきます。(慣れていけば、あらかじめ 話し合うテーマを前時に予告しておき、考えをもたせておいて話し合うことも可能になる)
C 最初から「なぜ〜なのだろう」といった、一つの答えを求める発問をすると、一人一人が読 んできた成果が出せなくなる。この時点では、「2の場面のおもしろいところを話そう」「ごん と兵十の気持ちについて考えよう」など、なるべく話し合いの間口を広くするとよい。
D 話し合いを「どこを」「どう読み」「どうとらえたか」の順番で進めると、子供も意見を出しや すくなる。
E 「〜のところで、こう思ったよ」という話し方をさせると、ひとり読みノートから外れないし、 子供の読みを中心としながらも叙述や言葉を問題にした話し合いができる。
F 子供たちに「付け加えて・・・」「よく似ていますが・・・」と言わせると、多くの意見が出やすくなる。
G 子供たちの意見を二つに分けることができたら、活発な討論が可能になる。
H 黒板は、子供たちの話し合いを交通整理し、思ったことや考えたことをまとめていく大切 な支援となる。授業の終わりに、子供たちが黒板を眺めて「みんなよく考えたな」「あそこが よくわからないな」と、つぶやいたり思ったりすれば大成功。 (5) 教師の発問を考えさせる
@ 子供同士の話し合いで、大切なことに気づかず考えが深まらない時は、教師が切り込ん で読みを深めることが必要となる。例えば、「先生が不思議でならないのは、ごんのことば かり話が出ていて、兵十のことが出てこないことです。兵十もかわいそうではないのか」と、 立ち止まって子供たちに揺さぶりをかける。授業の成否はここで決まるといってよい。
A また、子供からは出てきにくい、分析批評の「対比」「色彩イメージ」「中心人物」「視点」「 盛り上がりの場面」などから、少なくとも一つを問うことで主題に迫り、分析の視点を学ばせ たい。 (6) 「今日の話し合いで」を毎時間必ず書かせる
授業の終わり(5分間)に、今日の話し合いで見直したこと、わかったこと、学んだこと、疑 問なこと、思ったことなどの「学習内容」や「自分の考え」を書かせる。
子供の見直しパターン
@ 「やっぱりそうだった」と自分の考えを再認識する。
A 「おかしいな」自分の考えが揺らぎ始める。
B 「〜さんの意見が気になって仕方がない」人の考えに揺り動かされ始める。この時、子ど もは相手の考えを真剣に聞こうとしてくる。この段階を認め褒めると、深く考える習慣が身に 付く。
C 「くやしいけど、僕の考えより〜さんの方がいいようだ」自分にない友達のすごさを認める 。こうなった時、子供が成長する。
◎ 本教材の終わりに、ひとり読みノートを整理して、まとめさせる。 @ まとめを発表しあったり、掲示したりして、互いの健闘を称え合う。
A 時間が許せば、ひとり読みノートをもとに本格的な作文(評論文)を書かせる。
<物語文の指導案(例)>
<説明文の指導案(例)>

<ひとり読み学習(物語文)の指導案(例)>

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