すぎた きゅうしん
杉田久信の “現場”
からの教育提言
 ≪基礎学力で教育再生≫

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校長室の窓から

読み・書き・計算が子供の脳を育てる

富山市立山室中部小学校 校長室通信        第3号  (平成17年6月20日)

読み・書き・計算で「脳」活性化のスイッチが入る

子どもたちが将来幸せに生きていくためには、基礎学力は絶対に必要です。読み・書き・計算といった基礎学力は、これからの勉強の基礎として役立つだけでなく、社会生活をする上で最低限必要なものであり、生きる力の基礎にもなるものです。

最近の脳科学の発達で、「読み・書き・計算の反復学習、とりわけ音読と単純計算が、思考力や創造力を司っている大脳前頭前野を最も活性化させ、子どもの荒れ・切れをも防ぐ」という驚くべき効果が明らかになっています。 また、高齢者の認知症の改善・予防にも効果があることから、読み・書き・計算を核にした「学習療法」は急速に広がっています。脳の老化防止を願う老人の皆さんの間で、読み・書き・計算は静かなブームになっていますが、これは伸び盛りの子供たちにこそ必要なものです。

脳科学のこの分野の第一人者である川島隆太東北大学教授は、10数年の臨床データに基づき、「読み・書き・計算の基礎的な学習を十分行うことが、思考を司っている大脳の前頭前野を最も活性化させ、考える力や創造性の基礎をも培う」と述べています。 考える力をつけるためには、まず、小学校段階での読み・書き・計算といった基礎的な学習を十分行うことが大切だということです 。 まさに、読み・書き・計算の反復学習を行うことで「脳」活性化のスイッチが入るのです。

また、行動の抑制、情動の抑制を司っているのも大脳の前頭前野であることから、「荒れる、切れる子というのは、脳科学の立場からすると前頭前野が未発達である」というのです。読み・書き・計算が前頭前野を最も活性化するので、それは、荒れる、切れる子にも一定の効果があるといわれています。 

読み・書き・計算の反復学習を継続すれば、「知能」が高まる

反復練習なしではどんな力も身につきません。 しっかり反復練習することは、あらゆる技能や能力を身に付けていく際の普遍的な原理です 。 事実、 単純なこと、基礎的なことを徹底して反復練習してきた子は、それをやっていない子と比べると、天と地ほどの大きな能力の差になるものです。

読み・書き・計算の反復学習を徹底し継続すれば知能指数が伸びることも分かっています。知能指数は創造性とは相関関係が薄いから重要ではないとの考え方もありますが、知能指数や作業処理能力、記憶力を軽く見ることは誤りです。知能指数、作業処理能力などが高いということは集中力・持続力が高いことなのです。この集中力・持続力は考える時や創造する時に最も必要なものです。これらは知力の根幹となっているものです。どんなに天賦の才能を内に秘めている子供も、この集中力や持続力が身についていなければ、その才能も埋もれたままになり、決して発揮されることはないでしょう。

作業処理能力が高ければ、例えば、版画の学習で、普通6時間かかるところを、3時間で緻密な作品を完成することができます。また、わずか数行の文章を覚えるのに3日もかかった子が、記憶力が高まれば教科書1冊を何回か読むだけで内容が理解できて覚えてしまうようにもなります。能力を高めればゆとりが生まれるのです。これが真のゆとりです。また、これらの能力を高めれば、中学、高校、社会人になって行くにつれ、いろんな場面で大きな差になっていきます。本校が基礎学力の反復学習で目指すのは、脳力を高め、人間としての基礎を鍛えることです。それは、決して受験学力を目指すものではありませんが、結果として将来の受験学力にも生きてくるものです。

今日の中学生の作業処理能力は二十年前の約半分に低下しているとも言われていますが、これは、社会が便利になったことや、これまでの読み・書き・計算の著しい軽視も影響していると思われます。 

さて、 知能指数や作業処理能力は、小学校時代の読み・書き・計算の反復学習で最も高めることができるものです 。 記憶力も小学校時代が鍛える旬です 。この時期は最も多くのことが丸暗記でき、この頃詰め込まれた知識は一生、血となり肉となるのです。また、この時期に鍛えた記憶力は増殖・拡大しながら人生を通して力を発揮します。ですから、教科書の暗唱や都道府県名や国名、年号、百人一首など、いろんなことの丸暗記に挑戦させましょう。考える力と創造する力は、暗記の後で伸びてきます。

読み・書き・計算で「やればできる」が実感でき、「生きる力」も身につけられる

4月の学校便りでも記しましたが、読み・書き・計算の反復学習で身につくのは知識や技能だけではありません。読み・書き・計算の最大の効果は、子どもたちに達成感や自信をもたせて元気にすることができることです。 読み・書き・計算といった基礎学力は、段階を踏んで練習を繰り返しさえすれば、どの子も必ず身につけることができるものです。しかも、この練習を通して、 どの子にも「自分もやればできるんだ」ということを体験させ自信をもたせることができます 。この「やればできる」という自信は何よりも大切です。この自信の回復が子どもを元気にします。 とりわけ、音読・暗唱の効果は大きなものです。脳を活性化するだけでなく、子どもを元気にもしてくれるのです。「元気だから大きな声がでるのでなく、声を出すから元気になる」のです。 この自信は 学習への構えにつながり、 学習意欲をも向上させます。 今日、学習意欲を高めることが問題だとよく言われますが、子供は「できる」、「わかる」ようになれば、自信がつきます。自信がつけば勉強が好きになるのです。つまり、やればできるという自信が学習意欲を高めるのです。 また、その自信から自己肯定感が生まれ、子供たちに精神的安定と落ち着きをもたらし、生徒指導上の効果も現れてきます。

さらに、読み・書き・計算といった基礎学力を高めることが、集中力や持続力、認識力などの学習能力そのものを著しく高めます。 また、読み・書き・計算の反復学習には若干のつらさが伴うことがありますが、そのつらさを乗り越える中で「少々の困難にも立ち向かって乗り越えていく力」や「チャレンジする力」も身につけることができます。子供たちがつらさを乗り越えて学習に取り組めるよう、学校でも家庭でも励まし続けていきましょう。

「好きなことだけやればよい」と考えて、読み・書き・計算をおろそかにしてきた子は、社会生活を送る上での最低限の知識や技能等が不足するだけでなく、 「少々の困難にも立ち向かって乗り越えていく力」「チャレンジする力」そのものが 身につきません。読み・書き・計算をおろそかにしてきた子は、中学や高校で勉強が少し難しくなるとたちまち逃避してしまう傾向があります。今日、日本の中学生、高校生が先進国の中で最も家庭学習の時間が少ないのは、ここに原因がありそうです。

これに対して、小学校時代に読み・書き・計算を徹底的に鍛えてきた子は、中学、高校、社会人になっても、「確かな基礎学力」と「集中力と持続力」、「チャレンジする力」がついているので、困難なことにも立ち向かい、物事をやり遂げることができるのです。

ところで、物事を創造するときに最も必要な能力はこの「集中力」です。考える力とは集中力といっても過言ではありません。また、物事をやり遂げる時に必要なのは「持続力」です。 この集中力や持続力、さらに、チャレンジする力こそ、「生きる力」の中核といえるものです 。そして、 この集中力と持続力、チャレンジする力は 読み・書き・計算の反復学習で最も身につけやすい のです 。

★誤解のないように断っておきますが、教育ではバランスが大切です。基礎的な学習だけをやっていればよいのではなく、豊かな体験学習や話し合い学習、追究学習、発展的な学習などで考えを深めることも当然必要です。ただ、確実に成果を上げるためには、「基礎を身につけてから応用に向かう」という当然の順序を守ること が大切だということです。

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