すぎた きゅうしん
杉田久信の “現場”
からの教育提言
 ≪基礎学力で教育再生≫

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校長室の窓から

計算力を鍛えると算数が得意になる

富山市立山室中部小学校 校長室通信        第6号  (平成17年9月8日)

2学期が始まりました。学校は元気な子供たちの声が響き、活気が戻ってきました。
さて、第4号で「音読・暗唱が子供を元気にし、国語力の向上に効果的である」ことについて記しました。今回は、計算力を鍛えることの効果とその意義について考えてみたいと思います。

   「できた!」の達成感がやる気を引き出す【効果】

算数の学力を高め、得意にする最も簡単・確実な方法は、ゆるぎない計算力をつけること です。
実際に、計算力を徹底的に鍛えることで自信をつけ、算数そのものも得意教科にしていった子供たちを、私はこれまで数多く見てきました。学校ぐるみで100マス計算などに取り組み、計算力を鍛えることを徹底してきた学校(陰山校長の土堂小や私の前任校もその一つ)があります。それらの学校では、共通して以下の著しい効果が見られました。

@ すべての子供たちの計算力だけでなく、算数そのものの成績も向上した。

A 子供たちの中に「やればできる!」といった達成感や自信、自己肯定感の広がりが見られ、問題
   行動の減少や落ち着きといった生徒指導面でもよい効果が現れた。また、子供たちの活力も高ま
   り元気になった。

B  「できた!」の達成感がやる気を引き出し、全般にわたって学習意欲が向上した。

C すべての学年で学習への構え(学習規律)が確立した。

D 集中力や持続力、認識力などの学習能力が著しく向上した。

E 時間感覚が身につき、作業処理能力が向上し、どの子も素早く行動できるようになった。

F @〜Eの結果として、学習にゆとりが生じてきた。

    計算力を鍛える反復学習は、脳の力そのものを高める【意義】

計算力を鍛えると算数そのものの成績が向上するのは、計算の反復学習を繰り返すことによって、数の概念や数感覚、数学的な思考力の基礎が形成されるからだと考えられます。反復練習が一定の量を超えると意味がつながってくることはよく見られる現象です。

最近の脳科学においても、「音読と単純計算が、思考を司っている大脳の前頭前野を最も活性化させ、考える力の基礎を培う」ことが明らかになっています。つまり、単純計算の反復学習を十分行うことで、考える力や創造力の土台が形成されるというのです。

また、授業の前に100マス計算などを短時間行うだけで、脳のウオーミングアップになり、記憶力や集中力が20〜30%向上することや、継続して練習していけば知能指数(IQ)も確実に高まっていくことが知られています。「100マス計算」の効果は体験的に知られていますが、脳科学の立場からもその効果が裏づけられています。
脳の力は繰り返しによって育つのです。 計算の反復練習は脳を鍛えるトレーニング でもあるのです。

★ 「計算問題が70点でまあまあだけど、応用問題が20点。だから応用問題に力を入れよう」との考えがあります。しかし、それはうまくいきません。基礎的な問題である計算問題が70点や80点しかとれないことこそ問題です。計算問題は限りなく100点に近くなければなりません。そこの力がつかなければ、次の応用問題の正答率は上がらないものです。

段階を踏んで練習すれば、どの子も「やればできる!」が体験できる

小学校卒業時までに到達すべき基本的計算力のレベルは、 「あまり(繰り下がりあり)のあるわり算100題」を5分以内でできる ことです。(3分以内でできる子供たちもいますが、彼らは例外なく、集中力も考える力も飛び抜けて高いです。) ここまで計算力を鍛えておけば、圧倒的な計算力になっていて、他の複雑な計算にも応用がききます。そればかりか、この力は通分・最大公約数・最小公倍数・比例などを計算、理解する上で盤石の土台になります。それは、中学や高校の数学でも有利に働きます 。

以下の「あまり (繰り下がりあり) のあるわり算」の10題をやってみてください。(目標30秒以内)

 31÷4=  ・・・   23÷8=  ・・・   34÷9=  ・・・   41÷7=  ・・・

 54÷8=  ・・・   61÷7=  ・・・   52÷6=  ・・・   71÷8=  ・・・

 43÷9=  ・・・   63÷8=  ・・・   【 100題で5分以内なら10題は30秒以内 】

確かな計算力は以下の単純計算を段階を踏んで反復練習をすれば、どの子も必ず身につけることができ、「やればできる!」という自信をもたせることができます。

◎ 「声を出して行う計算の基礎練習」や「フラッシュカードによる計算練習」 (声に出すことは効果的です)
   ・10までの数の分解・20までの数の分解・かけ算九九の暗唱、のぼり九九、さがり九九など

◎ プリントによる計算練習
   @ 10マス計算 【たし算、ひき算、かけ算】 (各10〜20秒以内)
   A 50マス計算 【たし算、ひき算、かけ算】 (1分30秒以内)
   B 100マス計算 【たし算、ひき算、かけ算】 (3分以内)
   C 穴あき九九100題  例 6×( )=48 (3分以内)
   D あまりなしのわり算【基本わり算A】100題  (3分以内)
   E 九九の構成81題  例 28=(4)×(7)、(7)×(4)(3分以内)
   F あまり(繰り下がりなし)のあるわり算【基本わり算B】100題  (3分以内)
   G あまり(繰り下がりあり)のあるわり算【基本わり算C】100題  (5分以内)

時間を計ることで学習能力、作業処理能力が高まる

百メートル走を60秒で走る者が13秒で走れるようになったら、それは運動能力がまるで別人のように高まったということです。こんなことは実際にはまずあり得ません。しかし、100マス計算では10分かかった子が1分30秒でできるようになることは珍しいことではありません。その時、その子の学習能力、作業処理能力も驚異的に高まっています。本人の達成感や自信も大きいものです。陸上競技も100マス計算も、時間を計るからこそ上達が目に見えて実感でき、達成感が得られるのです。

計算練習で 時間を計るのは、 人と比べるためではなく 、昨日の自分と比べて進歩をとらえるため です。しかも、子供にとっては、時間を縮めることはゲーム感覚で楽しみながらやれるのです。時間を計ることによって、子供たちの時間感覚や作業処理能力、集中力や持続力といった学習能力が高まるのです。

 ※ 2学期から基礎学力の時間(8:40〜8:50)を設定しました。この時間は、計算力を鍛えることを
    中心に有効に活用し、どの子にも基礎学力をしっかり身につけさせたいと願っています。

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