すぎた きゅうしん
杉田久信の “現場”
からの教育提言
 ≪基礎学力で教育再生≫

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校長室の窓から

記憶力は小学校時代が鍛える旬 ( しゅん)

富山市立山室中部小学校 校長室通信        第8号  (平成17年11月25日)

「知識ばかり詰め込まれて、考える力が育たず個性や創造性がつぶされている」との詰め込み教育批判が常識のように唱えられています。しかしこれは、少なくとも小学校には見当はずれな意見です。小学校で覚える知識は、その後の勉強の基盤になるものであり、社会生活を営む上でも基礎となる必要なものばかりです。また、これらの基礎知識は、考える力や創造性を伸ばす上でも必要不可欠なものです。知識が詰め込まれていると言われますが、実際には知識の暗記に力を入れている学校などはほとんどなく、むしろ、基礎 知識や基礎学力が身に付いていない子供たちが増えているのが現実です。特に、 基礎 知識や基礎学力の低下は、できない子供たちの間で深刻さを増しています。このような学力実態が、小学校の高学年や中学校での授業崩壊や荒れやキレにつながっている例は少なくありません。学力の崩壊が人格の崩壊にさえつながっているのです。今日必要なのは、すべての子供たちに確かな基礎学力を 反復学習でしっかり 身に付けさせることです。小中学校では基礎知識をしっかり定着させることに重点を置き、その基盤の上に高校や大学では個性や創造性を伸ばすことに力を入れるべきだと考えます。

反復学習で右脳が目覚める

詰め込み学習と呼ばれるものには、「一夜漬け学習」と「反復徹底学習」の二種類があります。この二つは似ているようで実は全く違うものです。「一夜漬け学習」では、必死で詰め込んだ学習内容もテストが終われば、ほとんど忘れてしまいます。このような学習を長年続けていると生命力をすり減らし、燃え尽き症状に陥ります。これは、脳の一部(大脳新皮質)ばかりを酷使するからだと考えられています。

逆に「 反復徹底学習」 は、知識・技能がしっかり身につくだけでなく、記憶力や理解力、思考力などの脳の力も伸びます。しかも、この学習は脳の全体(大脳新皮質だけでなく、大脳辺縁系や脳幹までも)を使っているので、子供はますます元気になり自信をつけ、生命力までもが高まるようです。

一夜漬け学習は「左脳記憶」であり、反復徹底学習は「右脳記憶」です。右脳教育の草分け的存在である七田 眞氏によれば、右脳教育には二つの柱があり、一つは、「右脳のイメージ力を育てる」こと、もう一つは、「反復練習で右脳の記憶力を育てること」であると説明しています。「 反復徹底学習」は体で覚える学習であり、それは右脳学習であるというのです。 そして、スポーツでも芸能でも勉強でも、 「 基礎的な内容の 繰り返しが右脳を目覚めさせ、天才を育てる」と述べています。その例として、プロ野球のイチローや松井といった超一流選手が今も毎日一千回以上のバットの素振りを続けていることや、日本最初のノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士が幼少期に四書五経の徹底した素読(音読・暗唱)を行っていたことなどを説明して、 基礎的な内容の反復学習の大切さを強調しています。また、「声に出して読みたい日本語」で有名な明治大学の齋藤孝教授も 「反復練習なしでは、どんな力も身につかない。しっかり反復練習することは、あらゆる知識や技能、能力を身に 付 けていく際の普遍的な原理だ」と述べ、反復学習の重要性を繰り返し語っています。

記憶力が伸びれば、理解力や考える力も伸びる

「単なる暗記は何の価値もない。意味の理解や考える力こそ大切だ」として子供に暗記を求めることをせず、理解させることに重点を置いた授業が一般的です。しかし、理解させるだけでは、子供の能力は伸びず、授業内容も身につきません。特に、理解力の弱い子は置いていかれることになります。 例えば、二年生のかけ算九九の学習では、通常、九九の意味の理解を中心に学習します。長い時間をかけて、子供たちに多様な考えを出させ、話し合いをしながら九九の意味を理解させます。最近の教科書もそのように構成されています。しかし、 理解力の弱い子を中心に、多様な意見を聞けば聞くほど混乱し「意味の理解」につまずいてやる気をなくし、九九の暗記や計算の習熟にも取り組めない子供が出てしまいます。ところが、先に九九の暗唱を毎日反復して全員に暗記させてから「意味の理解」の学習をすると、どの子も短時間で理解できるのです。すでに暗記している九九の意味がつながるからです。先に暗記していれば理解を深める上で圧倒的に有利です。この暗記を先にするやり方は昔の学習法だと批判されますが、今年本校の2年生で実際に取り組んだ結果からも、かけ算九九に関しては落ちこぼれはほとんど生じていません。これは、 記憶が確かになると、理解や思考も確かになる からだと考えられます。

また、齋藤孝教授が紹介している例に 西サモアの小学校の英語教育があります。そこの英語の標準的な授業は徹底した基本文の暗唱訓練だというのです。実際に見学された 齋藤教授によると、 黒板に書かれた5つ程の基本文を、立たせたり座らせたり、男女交互にしたりなど変化をつけながら、 圧倒的パワーで 45分間の授業の間に数百回も音読・暗唱させているのだそうです。 この英語教育でほとんどの島民が自由に 英語を話せるようになっているとのことです。このことから、 齋藤教授は、「 理解中心の英語教育では十年たっても英語を話せない。しかし、音読・暗唱の反復による『記憶』中心に変えると半年もたつと英語が話せるように育つ」と語っています。

暗記を大切にした教育、完全に覚えさせる練習をしていくと、子供の頭の質が変わり理解の質も変わるようです。ところが、理解中心だけでは頭の質は変わりません。 記憶力が伸びれば、理解力や思考力も伸びます 。そうすれば、学習内容も楽に入っていきます。また、暗記できた自信でやる気が育ち、積極的に学習する姿勢も出てきます。これは実際に取り組んでみれば分かることです。小学校時代に大量の暗記に取り組んだ子供は、質のよい記憶力を育て理解力や思考力も伸びるので、中学や高校でも学習がとても楽になります。理解力、思考力を伸ばすには、まず記憶力を鍛えることが最も確実な方法です。

丸暗記に楽しみながら挑戦させよう

記憶力は小学校時代が鍛える旬です。この時期は最も多くのことが楽々丸暗記でき、この頃詰め込まれた知識は血となり肉となり一生忘れません。また、この時期にしっかり鍛えた「記憶力」は中学・高校だけでなく人生を通して力を発揮します。ですから、教科書の暗記や都道府県名、国名、年号、百人一首などの丸暗記に楽しみながら挑戦させたいものです。それらすべてが記憶力のトレーニングになります。 子供たちの考える力と創造する力は、暗記の後で伸びてきます

 10月に実施された計算・漢字のチャレンジテストの、全校の合格者(80点以上)は、

 計算 98.1 %、 漢字 95.3 %でした。この結果は、学校全体の基礎学力の底上げが

 徐々に成果を上げてきているものと受け止めています。子供たちのがんばり、先生方の地道な指導、さらには、ご家庭のご協力も大きかったと感じています。心より感謝いたします。

 1月、2月には、後期のチャレンジテストが予定されています。今回以上のレベルアップを図り、自信をつける子供たちを増やしたいと思います。ご協力よろしくお願いします。

★  保護者の皆様には子供たちの健康的な生活習慣、とりわけ、 早寝、早起き、朝ご飯。テレビとゲームは時間を決めること に格別のご配慮をお願いいたします

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