![]() |
すぎた きゅうしん |
![]() ![]() |
A.理論編 B.実践編 C.心の教育 ◆校長室の窓から ◆リンク集 |
|
富山市立山室中部小学校 校長室通信 第12号 (平成18年6月8日) |
「学力低下」「荒れ・切れ」の最大の原因は睡眠不足と偏った食生活
1980年代に日本は「夜型社会」に突入したと言われています。バブルの膨張と崩壊を背景に、安いテレビの増加で「テレビが一家に一台」から「一人に一台」化、番組の深夜化の進展、24時間営業のコンビニの激増、テレビゲームの爆発的な普及、レンタルビデオの普及などで、日本社会全体の夜型化が加速しました。東京都教育庁の調査によると、小学4年生で夜10時前に寝る子は、1979年には8割いたのが2002年には5割に減少、中学3年生では12時以降起きている子が4割台から7割に増加しています。
1980年代から顕著になってきた落ち着きのない子供の増加、体力の低下、不登校生徒の増加、一部の子供の荒れ・切れ行動、学力低下などの現象は、こうした子供の生活の夜型化・睡眠不足、食のファーストフード化と完全に一致しています。このことから、睡眠不足と偏った食生活こそが、学力低下の最大の原因になっていると考えられます。
早く寝る子ほど学力は高い
昨年も紹介しましたが、以下に示したのが、睡眠と学力の関係の資料です。
睡眠時間とテスト平均点の相関関係(広島県基礎基本調査 小学5年生 27125名)
5時間未満 |
5時間台 |
6時間台 |
7時間台 |
8時間台 |
9時間台 |
10 時間以上 |
|
国語 |
51.9点 |
61.8 |
66.1 |
69.9 |
70.8 |
70.3 |
64.7 |
算数 |
53.9点 |
63.8 |
69.8 |
73.9 |
74.1 |
73.8 |
67.7 |
この調査結果を見ると、 学力がつく睡眠時間は8時間から9時間の間 ということになります。(極めて高い学力の子供は午後9時半までに寝ているという調査もあります) また、5時間未満という睡眠不足の状況では、極端に成績が下がるということが分かります。ただ、 10時間以上は逆に点数が下がっています。寝過ぎもよくないようです。
子供には十分な睡眠時間が必要です。睡眠不足の子供に集中力や持続力はありません。また、睡眠時間が不足すると、ホルモンの分泌や神経リズムが狂い、なんとなくだるい、怒りっぽく感情的になりやすい等の症状が出てきます。そして、気力や生命力すら弱くなってしまいます。こんな状態では学力の向上など期待できるはずがありません。学力づくり以前に、早寝・早起きの生活習慣を整えることこそ必要です。早寝・早起きすると子供は元気になります。子供の心身の健康を考えると、遅くとも低学年は夜9時までに、高学年でも 10時には就寝し朝6時ごろに自分で起きることを 習慣 にしたいものです。
朝食を食べている子ほど学力は高い
次の資料は、食事の内容が学力にどんな影響を与えているかを調べたものです。東京の中野第六中学校の廣瀬正義教頭先生が出されたデータです。
一食あたりの摂取食品数と学習成績(廣瀬正義氏調査より)
一食に使われる食材数 |
4未満 |
4〜6未満 |
6〜8未満 |
8〜 10 未満 |
10 〜 12 未満 |
12 以上 |
5教科学力テスト偏差値 |
48 |
51 |
53 |
56 |
58 |
62 |
9教科評定合計点 満点45 |
24 |
26 |
28 |
31 |
32 |
34 |
この資料から、 食べる食材の種類が多い子供ほど、学業成績は高くなる ことが分かります。逆に、食べる食材が少ないほど、学業不振になりやすいことも分かります。(それだけでなく、食生活が偏ったり貧しかったりすると、やる気や元気がなくなるというデータもあります)
食事の中でも朝ご飯は特別重要です。朝ご飯を食べるか食べないかで、学力も体力も大きな差が出ます。「朝ご飯を必ず食べる」と「たいてい食べる」を比べただけでも、学力は平均点で10点近くの低下が見られるとの調査(文科省:朝食と英語の得点)もあります。
伸び盛りの子供たちには朝食は絶対に必要なものです。当然のことながら、朝食を食べてこない子供には元気がありません。脳で使われるエネルギーが不足しているので、集中力に欠け頑張りもききません。さらに、イライラして精神的にも不安定になりがちです。
また、前土堂小学校長の陰山英男氏が話していたことですが、土堂小学校で「朝食がご飯・みそ汁の子供たち」と「パン食の子供たち」の成績を調査したところ、ご飯食の子供たちの成績が断然よかったとのことです。(ご飯の方が長い時間ブドウ糖を脳に送り続けることができるといわれています)
ご飯だけでは不足するアミノ酸は、みそ汁や豆腐、納豆といったものを一緒に食べることで補えます。パン食の場合も、食材の種類を一品でも多くしていただきたいと思います。パンとみそ汁の組み合わせ は意外に相性がよいものです。
テレビを見る時間が短いほど学力は高い
学習意欲や学力が高い子は決まってテレビを見る時間が短いものです。逆に、テレビを長時間見ている子供は、忘れ物が多く、集中力・持続力に欠け、基礎学力さえもなかなか身につきません。また、生活にけじめがなくなり、だらしなくなります。
睡眠不足の最大の原因はテレビ〔男子はゲームも〕です。 テレビを見る時間は 子供とよく話し合って 決めることが大切です。これこそ生活改善の中核です。できれば、平日なら長くても1時間半以内にしたいものです。テレビを見ないことで生まれた時間は、家庭学習、運動、読書、好きなこと、お手伝いなどの有意義な事に使わせましょう。親も付き合って有意義な時間を過ごしてほしいと思います。また、少しでもよいテレビ番組を選んで見る習慣をつけたいものです。食事の時間にテレビを消せば、親子の会話のゴールデンタイムになります。食事時間だけで親子の会話はかなり確保できます。
ぜひ、テレビを減らして早寝・早起き・朝ご飯を!