すぎた きゅうしん
杉田久信の “現場”
からの教育提言
 ≪基礎学力で教育再生≫

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校長室の窓から

子供を元気にしながら 学力を伸ばすB 「愛されている実感」なくして学力向上なし

富山市立山室中部小学校 校長室通信        第14号  (平成18年7月6日)

愛されている実感・確信がなければ心は不安定で、学習にも集中できない

子供を元気にしながら学力を伸ばすには、生活習慣の改善(前前号 12号参照)や基礎学力を鍛えること(前号13号参照)が大切です。しかし、最も大切なことは、子供が愛されている実感と確信をもつことです。これこそが学力向上と人格形成の出発点です。愛情不足や自分を理解してもらえない不満が心の中に充満している子供は、なかなか学習に集中できず、生活改善もうまくいきません。そして、問題行動も一向に減りません。親から愛されている実感と確信は、子供に精神的安定を与えます。これがあってこそ、基礎学力や生活習慣の改善という方法論が生きてきます。親も教師もこのことに対してもっと敏感になることが必要だと思います。

ところで、近年、「さびしい子供」、「愛情に飢えた子供」たちが以前にも増して著しく増えています。これは親の多忙化、家族構成の変化(核家族化の進展等)、親の価値観の変化(仕事優先、親自身の楽しみ重視)などで、子供とのかかわりが薄く子供の気持ちを受け止める余裕もなくなっていることが原因と考えられます。

 「さびしさ」「愛情不足」は「心の不安定」をもたらします。そして、「心の不安定」は、たびたび「怒り」を生み、様々な「問題行動」につながっていきます。さらには、悪条件が重なれば「凶悪事件」にまで発展していくことさえもあります。もちろん、「さびしさ」がすべて事件や犯罪に直結する訳ではありません。規範意識や理性が育っていれば、問題行動は抑制することができます。しかし、問題行動の出発点になっている「さびしさ」や「愛情不足」を解消し、愛されている実感と確信をもたせることこそ、規範意識の前に真っ先にやるべきことだと思います。

愛されている実感と確信を我が子にもたせるために、

@  楽しみながら 親子のコミュニケーションを!

小学生には、まだまだ、親と一緒に過ごす時間が必要です。何よりも子供にさびしい思いをさせないことが大切だと思います。家族の団らんは特に重要です。家族全員で食事をして、なにげない会話を楽しんでいただきたいものです。テレビを消せば食事の時間は親子の会話のゴールデンタイムになります。家族団欒の中で子供の心は健やかに成長しコミュニケーション能力も伸びていきます。これが一番大切な心の教育の場です。

親子のコミュニケーションは、子供に愛されている実感をもたせる上で最も重要です。この親子のコミュニケーションは、大脳の前頭前野をも活性化させることが脳科学で確かめられています。とりわけ、乳幼児期から学童期までのコミュニケーションは、脳を著しく活性化させるといわれています。

上手に親子のコミュニケーションをとるには、子供の話を感心して聞いてやることが効果があるようです。感心して聞いてやれば子供は毎日話をしてくれるのです。また、ニュースなどの話題について子供からコメントを求め、話し合うこともよい方法です。 いずれも親自身が楽しみながらやることが効果的 なようです。

親によっては遅い帰宅にならざるを得ない事情がある方もおられるでしょう。そんな場合は、ふれあいの密度を高める工夫をしてほしいと思います。以前私が学級担任していた時に、置き手紙やテープレコーダーを使って毎日子供に愛情に満ちたメッセージを伝えたり、遅い帰宅の後、短時間でも会話や遊びを大切にしたりして、子供にさびしい思いをさせない 工夫を楽しみながらされていた 母子家庭のお母さんがおられました。そのお子さんに親の愛情は十分伝わっていました。それだけでなく、苦労している親へのいたわりの心さえ育っていました。成人後に会う機会がありましたが、立派な社会人になっていて、結婚して温かい家庭を構え、母親とも同居していました。私も温かい気持ちになるとともに、お母さんの偉大さを感じました。

A 子を愛する親の気持ちを明確な言葉で伝えておきましょう

親の思いは明確な言葉で伝えることが大切です。「あなたは私にとって大切な存在だ」、「あなたが生まれて きてよかった」、「私はあなたを信頼している」、このような親の心からのメッセージを時々言葉で伝えておきましょう。これは愛されている確信を子どもにもたせる上で極めて効果的です。

B 「十分甘えさせる」、しかし「甘やかさない」

・子供が求めてきた時にしっかり 気持ちを受け止めてやる のが「甘えさせる」(普段は子供に任せている)
・子供が求めてもいないのにあれこれ世話をするのが「甘やかし」(普段から細かく干渉している)

小学生の子供には、まだ十分甘えさせることが必要です。十分甘えた子供は親から愛されている確信をもっているので、逆に自立が早いといわれます。ところで、子供に十分甘えさせることは必要ですが、かまい過ぎには注意しなければなりません。かまい過ぎ、それは甘やかしです。かまい過ぎ=甘やかしは子供の心に依頼心を生じさせ、著しく自立を遅らせます。しかも、かまい過ぎ=甘やかしは子供から感謝の心を無くさせます。

特に、「物の与え過ぎ」には気をつけたいものです。子供の欲しいものは、しばらく待たせてから与えることが大切です。そうすることで忍耐することや待つことを身につけ、感謝の心も育ちます。子供が求めてきた時に受け止めてやるのは 子供の気持ち であって、子供のすべての要求を聞いてやることではありません。

『子供のすべての要求を聞いてやれば、子供は確実にわがままなダメ人間になる』といわれています。まして、子供が求めてもいないのに高価な物を次々に買い与えてやるのは最悪といえるでしょう。

C 子供が大切にしているものを尊重しましょう

子供に限らず人間は誰でも自分の大切にしているものが尊重されると、理解された、受け止められたと感じ、尊重してくれた人に好意をもちます。逆に、自分の大切にしているものが否定されると敵意をもつものです。

小さな子供にも自我があり、大切にしているものがあります。子供の大切にしているものは、大人からは「くだらないもの(ex:アニメカード集め等)」に見えることは少なくありません。しかし、子供の大切にしているものを尊重することこそ子供を愛するということであり、子供の人格を尊重することだと思います。(ただし、尊重し受容することと、すべてを許容することは別です。内容によっては保護者の賢明な判断が必要です)                                                     

D ほめて育てる努力をしましょう

 十分ほめてやると子供は精神的にずいぶん安定します。ほめることは最高のコミュニケーションです。

叱ることが多くてほめられないのは、子供への要求水準が高いからです。 子供への期待から、知らず知らずのうちに親の要求水準は高くなってしまいがちです。 ほめるコツは、思い切って「子どもへの要求水準を一旦下げ、できていることをほめること」です。『できなくて当たり前。できたらすごいんだ』と要求水準を下げれば、ほめることはいくらでも出てきます。その方が楽しく子育てができるし、結果として子供も伸びます。これは、 いつも叱られてばかりの子供には特に効果的 です。 また、「結果でなく、チャレンジの姿勢や努力をほめる」「繰り返してほめて自信をもたせる」ことも効果的です。(ほめるコツ:詳しくは9号参照)

E 子供の気持ちを大事にしましょう      

 愛情不足や自分が理解されない不満をもつ子供は、無意識のうちに様々な問題行動を起こすことが多いものです。人に暴言を吐く、暴力をふるう、店で万引きする、テストプリントを隠すようになる、ウソが多くなる、イライラしていて不機嫌な顔をしているといった様子が生じてきたら、子供を叱るだけでなく子供がなぜそうなったのかを考えてみることも必要です。子供の問題行動は、「もっと自分の気持ちを理解してほしい」というサインです。それらの多くは、子供の気持ちがしっかり受け止められていないことが原因になっています。

よく見られるのは、我が子の気持ちを無視したまま、親の過剰な期待から学力への要求水準ばかりが高いパターンです。これは、学力向上を願うことが問題なのではなく、子供の気持ちを受け止めていないことが問題なのであり、また、子供の状況が把握されていないことが問題なのです。

ですから、子供の気持ちを大事にして、しっかり受け止めることに努めましょう。また、他方では子供を客観的に見つめて、その状況を正しく把握することにも努力したいものです。その努力は、「愛されている実感と確信」を子供に与えます。また、「子供を元気にしながら学力を伸ばす」ことにも必ずつながるでしょう。

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