すぎた きゅうしん
杉田久信の “現場”
からの教育提言
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校長室の窓から

欠点・短所を長所にするほめ方の工夫

富山市立山室中部小学校 校長室通信        第25号  (平成19年12月4日)

 「子供をほめるのは難しい。欠点ばかりが目について…」との声をたびたび聞きます。教師も親も、子供に「こうあってほしい」「こうなってほしい」と期待をもっているので、子供がその期待にそぐわないと当然ほめることはできないし、欠点ばかりが目につきマイナスイメージで見てしまいがちになります。確かに、欠点を直すことは大切なことであり、小学校時代にはある程度直すことも可能です。しかし、大人でも欠点ばかり指摘され続けていたら、「自分にもいいところはあるのに」「私のことをわかってくれない」と、相手に対して反発と不信感をもち自信も失ってしまうでしょう。ほめると叱るのバランスが大切なのですが、どうしても欠点ばかりに目がいってしまうのが現実というものです。そこで、今回は欠点ばかりに目が向かない方法について考えてみたいと思います。

短所が長所に見えてくるポジティブ・リフレーミング (肯定的な見方への枠組み転換)

松原達哉著の「自分発見20の私」の短所を長所に考える例= ポジティブ・リフレーミングを参考に、いくつかをご紹介します。

[ 短所 ] [ 長所 ]

 気が短い・せっかち      →      頭の回転が早い・反応が早い・行動が早い 

 自己中心的          →      人に流されない・自分の意見をもっている

 消極的            →      謙虚・控えめ

 臆病・優柔不断        →      慎重

 気が小さい          →      デリケート・謙虚

 集中力がない         →      いつも新しいことを考えている

 頑固             →      意志が強い・自分の考えをしっかりもっている

 飽きっぽい          →      好奇心が旺盛・新しいことに敏感

 くよくよする         →      自分を反省することができる

 気分屋            →      自分に正直・素直である

 細かい            →      よく気が付く・繊細

 怒りっぽい          →      熱意にあふれている・ストレスがたまらない

先を考えない         →      今を大切に生きている

 これらの例のように、欠点・短所も見方を変えれば長所になる可能性があることがわかります。ですから、子供の欠点は「その子らしさ」の特徴であり、見方を変えると実は長所ともいえるのではないか、と考えてみるのです。すると、子供に対する感じ方も言い方も違ってきます。

欠点への見方を変えると言い方も変わる

同じことを指摘するのに、言い方によって、受け取る側のイメージもまったく変わります。しかし、言い方の以前に見方を変えることこそ大切です。子供をプラスに見る見方に変えると適切な言い方は自然に出てくるものです。

 たとえば、子供に「おまえは気が小さい。男の子なんだからもっと堂々としなさい」とストレートに言うより、「おまえは何でもよく考えてから行動する慎重なタイプだね。でも、よく考えた後は堂々としたらいいよ」と言った方が効果的です。前者の言い方では、「気が小さい」という言葉が自分の欠点として刷り込まれてしまい、事に当たってますます 躊躇 ( ちゅうちょ ) することになります。後者の言い方なら自分の性格をマイナスにとらえることはなく、むしろ、「そうか、それなら今度は思い切ってやってみようかな」と思う勇気もわいてきます。この子供に勇気を与える言い方は、子供をプラスに見る見方が根底にあります。

 また、「おまえはほんとうに集中力がないんだな。もっと落ち着いて勉強しなさい」と言いたいところを、言い方を変えて「おまえはいつも新しいことを考えているんだね。だから 10 分と同じことができないのかもしれない。でも、 5 分だけでもいいから集中してやってみたらどうかな?」と言ってみるのです。子供は「 5 分だけなら」と 5 分間集中して勉強したとします。そこで「よく集中できたね」とほめてやるのです。こうすると、自分にもできたという自信と、ほめてもらったことで、 10 分、 20 分と集中できる時間は延びていくものです。

 自分に自信がないかぎり、子供は何にでも挑戦する勇気や意欲がもてないものです。この自信、勇気、意欲を与えるのに、欠点をも長所に見てやるという、親や教師のポジティブ思考が必要です。見方を変えれば、きっとほめるところも多く見つかるに違いありません。

欠点を含んだ「ありのままの子供」を認めることが安心感につながる

 心理学者によれば、「一つも欠点のない完璧な自分という理想像を作り上げ、理想像に一致しなければ、自分を認められず、自信をなくし、自分を嫌いになっている人間が増えている」ことが心身症や引きこもりの増大の背景にあるといいます。

しかし、完璧な人間などいないものです。人間は欠点をもったまま生きていく存在だと思います。むしろ、欠点をもち不完全だからこそ、一層の成長を目指して自ら努力していくものです。

ところで、教師も親も子供の欠点ばかり注意していると、子供は自分をマイナスイメージでとらえるようになります。そして、「ぼくは欠点だらけのだめな人間だ」「自分は嫌われているに違いない」と感じるようになります。それは、自信をなくし自分を嫌う子供を生み出すことになります。

本校には、子供たちを厳しく注意するだけでなく、「みんなのことが大好きだよ」と常に声をかけている先生方が少なくありません。そんな声をかけられている子供たちは極めて心が安定しています。

ご家庭におかれましても、叱った後には「おまえのことを嫌ってはいないよ」「大好きだよ」と声をかけていただきたいものです。それ以上に、日頃から「欠点があっても、おまえを愛しているよ」「完璧でなくてもいいんだよ」「ありのままのおまえでいいんだよ」ということを教えてほしいと思います。そうすることで、子供は安心感と愛されている確信をもちます。この安心感と愛されている確信があれば、子供は欠点を含めたありのままの自分を認め、自分自身が好きになります。これがあってこそ、前向きな気持ちになり、自分の欠点を直そうと努力することができるのです。

 また、自分の欠点やイヤなところが認められれば、他人のイヤなところも認めることができるようにもなります。

自他の長所に目を向けましょう

 本校では、まだ十分とはいえませんが、どの学年でも自分と友達の「よさ」に目を向け、長所を認め合い、自覚し伸ばす活動に取り組んでいます。学年によって「よいこと見つけ」「キラキラ紹介」などの名称で取り組まれています。これは、他人に対しても自分に対しても見方を変え、肯定的な目をもってくれることを期待した取り組みです。実際に「よいところ」が見えてくると、お互いを見る目が変わってきたり、自尊感情が高まってきたりするようです。

 人には、十のうち九つまで欠点だとしても、必ず一つぐらいはいいところがあるものです。そこを見てやり、惜しみなくほめたいものです。また、先に記したように、九つの欠点のうち半分くらいは、見ようによっては、長所に言い換えることができるものです。

 たえず人を「ほめよう」という目で見ていると、あらゆる人間関係がよいものになってきます。これは、教育においても基盤になるものだと思います。その意味で、まず「子供をほめたいと思う」ことが大切です。そうすれば、ほめるところを探すことが始まり、結果として子供を大きく伸ばすことにつながると思います。

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